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2015年11月13日金曜日

戦後賠償とODAのアレコレ その4




久しぶりにお堅いお話。

ODAです。政府開発援助です。

退屈なのでスルーしてください(@_@)




過去の記事です↓

戦後賠償とODAのアレコレ その1
戦後賠償とODAのアレコレ その2
戦後賠償とODAのアレコレ その3




これまでの記事では、2つの本の内容をできるだけ
分かりやすく(なってるかどうか自信がありませんが)
紹介してきました。


その内容を大雑把に要約すると、「日本がこれまで
実施してきたODAは、途上国支援というより、日本
経済のためという要素が強い」というものでした。


今回の記事は、そういった意見とは反対の
立場から書かれた本の紹介と感想です。



ODAの正しい見方 草野厚著






第1章が前書きのような形になっていますが、
その中で次のように書かれています。


「・・・驚いたのは、依然として、環境保護派や
人権擁護派による日本のODA批判が幅を
利かせていたことであった。日本のODAは
途上国の環境を破壊し、途上国の富裕層と
日本の企業(場合によっては政治家も)を
利するだけであり、肝心の途上国の貧困層の
救済には何の役にもたっていないとの画一化
された議論である。」



なるほど、草野氏の立場が明確にされています。
日本のODAは途上国支援に貢献している、と。



そういった意見もあって当たり前です。
そりゃそうです。


それではどんな内容なのか?草野氏はどのような
根拠で日本のODAは役に立っていると主張する
のか?


興味深く読み進めてみました。



草野氏は、ODAの影響で途上国の環境が
破壊されたり、住民が強制的に移住させられる
など人権問題が発生したりしたことを認め、
それを「あってはならないこと」としつつも、
全体としては利益を享受した人の数が犠牲に
なった人の数を上回るとして、ODAの有用性を
説きます。


ここでは「利益」「犠牲」の定義がよく分かりません。
そもそも数で比較すること自体が僕にはどうにも
理解できません。



続けて草野氏は、個々のプロジェクトの評価と
ODA全体の評価は個別に論じなければならないと
主張しています。


それはその通りだと思います。いくつかのプロジェクト
だけで全体を論じることはナンセンスでしょう。
全体を計る指標だって見る必要はあります。


ところが、本書ではODA全体を評価できるような
指標が全く示されていません。


援助対象国の識字率なのか?貧困率なのか?
どのような指標が適正なのか、僕もよく分かりま
せんが、そういったデータが一切ありません。



草野氏は、途上国が先進国のような経済発展を
願うのは押しとどめることはできないとし、それを
側面から支持することが先進国の責務だと言います。


それならば指標としてGDPなり財務状況なりの
データを示すべきだと思うのですが、それもなし。



草野氏のODA評価は、希望的観測に過ぎないと
いうのが、僕の率直な印象です。



本書にもいくつかのプロジェクトが例として
挙げられています。草野氏の主張するように、
その個々のプロジェクトの評価は、非常に
難しいのでしょう。捉え方によって正反対の
評価になってしまうことも有り得るというのは
よく理解できます。


しかしだからこそ、何を根拠に冒頭のような
評価をするのか、明示してほしいと思うのです。




本書は全6章の構成で、1章から4章まではODAの
歴史や現状を解説しています。初版1997年なので
数字は古くなっていますが、基礎知識を押さえると
いう意味では読んでみるのもいいかと思います。





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